実務刑事判例評釈(case 370)

東京地判令8.4.16

実務刑事判例評釈(case 370)
東京地判令8.4.16
LEX/DB(文献番号)25574981
CASE 370
アニメ、映画の内容を著作権者に無断で文字等により説明するなどした、いわゆるネタバレサイトにおける記事について、著作権法上の「翻案」に当たるとして著作権法違反を認定した事例(控訴審係属中)
法務省刑事局付
小田おだ あきら
はじめに

本判決は、被告人が、その運営するインターネットサイト(以下、「本件サイト」という。)上に、アニメ、映画等のあらすじや結末等を主に文字で記載した記事を掲載したという事案において、当該記事は著作物を「翻案」したもので著作権法上許容される「引用」には当たらない旨判示して著作権法違反を認定したものであり、著作権法における「翻案」の解釈及び認定に関し、実務上参考になると思われることから、紹介することとしたものである。

なお、本稿中、意見にわたる部分はもとより筆者の私見である。

事案の概要等

(1)公訴事実の要旨

本件は、被告人が著作権法違反の罪で公訴を提起された事案であり、その公訴事実は、要旨

「被告人は
第1 氏名不詳者と共謀の上、法定の除外事由がなく、かつ、著作権者の許諾を受けないで、他人が著作権を有する映画の著作物である『O』※1 の台詞を文字で抜き出し、登場人物の名前、動作、情景、場面展開等を文字で説明するなどして翻案した記事データを、インターネットに接続されたサーバコンピュータの記憶装置に記録保存し、同サーバコンピュータに接続してきた不特定多数の者に自動的に公衆送信し得る状態にし、もって、他人の著作権を侵害した
第2 Aと共謀の上、法定の除外事由がなく、かつ、著作権者の許諾を受けないで、他人が著作権を有する映画『G』の登場人物の名前、動作、台詞、情景、場面展開等を文字で説明するなどして翻案した記事データを作成した上、インターネットに接続されたサーバコンピュータの記憶装置に記録保存し、同サーバコンピュータに接続してきた不特定多数の者に自動的に公衆送信し得る状態にし、もって、他人の著作権を侵害した
ものである。」

というものである。

すなわち、前記第1の事実は、「O」を翻案した記事データを公衆送信し得る状態に置いたというものであり、前記第2の事実は、「G」を翻案した記事データを作成した上、これを公衆送信し得る状態に置いたというものであって、いずれの事実においても、公衆送信し得る状態に置かれた各記事データが「翻案」に当たることが前提となっているものといえる。

以下、本稿では、前記公訴事実要旨第1の記事データを「記事①」、同第2の記事データを「記事②」と呼ぶこととする。


※1
 具体的には、連続放送されるテレビアニメ番組の特定の1話であった。

(2)本判決で認定された主な事実関係

ア 記事①について
㋐ 本件サイトの「アニメ・漫画(マンガ)」のカテゴリーにおいては、冒頭に、「概要、あらすじ・ストーリー、登場人物・キャラクター、用語、名言・名セリフ/名シーン・名場面、裏話・トリビア・小ネタ、主題歌・挿入歌などの原文ママえておきたい情報がまとめられています。」と記載されていた。

㋑ (記事①は、「アニメ・漫画(マンガ)」カテゴリーに属する記事であり、)「O」の画像と一致する静止画像12点を掲載するとともに、ほとんどの台詞を逐一文字で抜き出し、登場人物の名前、動作、情景、場面展開等を文字で説明・描写するなどしたものである。また、場面が切り替わる局面では、場面の説明が入っていた。

イ 記事②について
㋐ 本件サイトの「映画」のカテゴリーにおいては、冒頭に、「概要、あらすじ・ストーリー、登場人物・キャラクター、用語、名言・名セリフ/名シーン・名場面、裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話、主題歌・挿入歌などの原文ママえておきたい情報がまとめられています。」と記載されていた。

㋑ (記事②は、「映画」カテゴリーに属する記事であり、)「G」に関し、「ネタバレ解説・考察まとめ」と題する3000文字余りのものであり、「『G』の概要」、「『G』のあらすじ・ストーリー」(この中の項目として「S1」、「S2」、「S3」、「S4」が示され、各項目についての説明が加えられている。)等から成り立っており、太平洋戦争中のGの登場、戦後の日本への襲来、人々とGとの格闘、Gの退却といったストーリーや、それに関連した主人公らの生活、活躍、それにまつわる人間関係が説明されている。

(3)争点

本件における主な争点は、記事①及び記事②が他人の著作権を侵害するか否かであり、弁護人は、いずれの記事も、「翻案」には当たらない旨主張していたほか、著作権法32条1項所定の「引用」であって著作権法違反には当たらないと主張していた。

なお、弁護人は、上記の点以外にも、告訴期間徒過を主張して告訴の有効性を争っていたほか、共謀の有無も争っていたが、紙幅の関係上、本稿ではこれらの争点には立ち入らない。

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