法学論文の書き方講座 「刑事訴訟法の事例問題」

刑事訴訟法の事例問題

法学論文の書き方講座 「刑事訴訟法の事例問題」

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作業の順番
❶ 問題文を読む。
❷ 論点を見つける。
❸ 答案構成を考える。
❹ 答案を書く。

例題

A巡査部長は、深夜に警ら中、路上駐車されている車両の窓ガラスから車内をのぞき込む甲を発見し、職務質問を開始した。その周辺地域は、最近、無施錠の車両を狙った車上ねらいが多発していたことから、甲に対して鋭意追及したところ、「約20分前、50mほど離れたところに駐車している車から500円玉1枚を盗んだ。すぐに使ってしまい、今はない。」旨の自供を得た。

A巡査部長は、甲から犯行場所として案内された場所に無施錠の車両が駐車されていること、本署を通じて甲の総合照会を行った結果、甲には車上ねらいの犯歴が5件あることを確認したことから、甲を窃盗事件被疑者として緊急逮捕した。

この事例におけるA巡査部長の逮捕行為の適否について述べなさい(逮捕後の身柄の措置に関する記載は不要)。

 

❶ 問題文を読む
問題文を読んで、前頁の1~3のあてはめを確認してください。1、2を導くのはそれほど難しくないでしょう。3が最も重要なので、後述します。
1 緊急逮捕
2 刑訴法210条
3 A巡査部長による緊急逮捕の適否

 

❷ 論点を見つける
本問のメイン論点(3)は、「A巡査部長による緊急逮捕は、緊急逮捕の(実質的)要件を満たすか」です。
緊急逮捕の(実質的)要件
緊急逮捕の(実質的)要件

特にしっかり検討しなければならないのが、2と3の要件です。

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「 2 嫌疑の十分性」について
一般に、被疑者の自供だけでは、嫌疑の十分性要件は満たしません。裁判で、被告人から「自供していない」とシラを切られたら、嫌疑が十分でないのに逮捕したとして、緊急逮捕が違法とされてしまうかもしれないからです。そのため、引当り捜査等の自供に対する裏付け捜査を速やかに行い、自供を補強する証拠を収集して嫌疑の十分性を認定しなければなりません。

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「 3 逮捕の緊急性」について
逮捕の緊急性とは、「通常逮捕を待っていられないこと」(裁判官に逮捕状を請求し、逮捕状の発付を得る時間的余裕がないこと)という意味です。
よって、その場で緊急逮捕せず、逮捕状を請求してから通常逮捕することが可能であったという場合は、本要件を満たしません。

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❸ 答案構成を考える
まず、緊急逮捕の要件を正確に記述します。
そして、事例の検討(緊急逮捕の要件を満たすか否かの検討)です。ここでは、2、3(・4 )の要件を満たすかどうかを特に丁寧に説明してください。

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❹ 答案を書く
答案構成ができたら、実際に書いてみましょう。
以下では、答案に沿ってポイント解説をしているので、よく読み込んでください。
1 結論
A巡査部長による緊急逮捕は、その要件を充足していないため違法である。
適否(適法か違法か)を答える
2 緊急逮捕(刑訴法210条)
(1)要件
ア 犯罪の重罪性
死刑又は無期若しくは長期3年以上の拘禁刑に当たる罪であること
令和7年6月、懲役と禁錮が拘禁刑に一元化されたよ
イ 嫌疑の十分性
〇 上記の罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由があること
〇 自供があった場合は、通常、それを裏付ける証拠が必要である
ウ 逮捕の緊急性
  裁判官の逮捕状発付という手続をとる時間的余裕がないこと
エ 逮捕の必要性
明らかに逮捕の必要がない場合ではないこと(緊急性が肯定される場合は、通常、必要性も肯定される)
(2)逮捕手続
ア 逮捕の理由の告知
㋐ 告知の内容
〇 罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由があること
〇 急速を要し、裁判官の逮捕状を求める余裕がないこと
㋑ 告知の程度
罪名を告げるだけでは足りず、逮捕の基礎となった事実を被疑者が確認できる程度に具体的に告知することを要する。
イ 逮捕後直ちに裁判官の令状を求める。
3 事例の検討
(1)犯罪の重罪性について
甲が犯した窃盗罪の法定刑は、10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金であるから、本要件を満たす。
(2)嫌疑の十分性
甲は、犯行を自供しているものの、次の事情から、本要件を満たさない。
自供を裏付ける証拠がないことを説明する
〇 無施錠の車両を対象としており、被疑者の犯行を裏付ける痕跡が認められない。
〇 窃取したとする現金が存在しない。
〇 被害者に対する被害確認ができていない。
(3)逮捕の緊急性・必要性
警察官の職務質問に応じ、かつ、身分が明らかになっており、逃走の兆候も認められないため、逮捕の緊急性・必要性があるとはいえない。
逮捕の緊急性・必要性がないことを説明する
(4)結論
以上から、嫌疑の十分性及び逮捕の緊急性・必要性を満たしていないため、A巡査部長による緊急逮捕は違法である。

 

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