国家情報会議設置法の警察における意義

国家情報会議設置法の警察における意義

国家情報会議設置法の警察における意義
北村きたむら しげる
北村エコノミックセキュリティCEO
元国家安全保障局長・内閣特別顧問
元内閣情報官
元警察庁警備局外事情報部長
北村エコノミックセキュリティCEO 元国家安全保障局長・内閣特別顧問 元内閣情報官 元警察庁警備局外事情報部長 北村 滋

我が国の安全保障をめぐる環境は、静かに、しかし確実に変質している。その変化は、必ずしも戦争や武力衝突といった目に見える形で現れるとは限らない。外国の意図を受けた対日有害活動、国際テロリズム、サイバー空間を舞台とした攻撃や偽情報の流布は、日常と非日常の境界を曖昧にしながら、我が国の社会や国家機能に静かに浸透している。かかる脅威に対し、国家として特定の事象を覚知し、それへの対処を判断し、いかに行動するのか。一連の意思決定の前提となるのが、正鵠せいこくを射た「情報」にほかならない。

国家情報会議設置法は、この課題に正面から向き合い、情報活動を国家安全保障の中核に据え直すための制度的基盤を構築するものである。最も重要な点は、情報を単なる素材や参考資料としてではなく、いわば国家の意思決定を支える国力の重要な要素として位置付けたことである。情報は集められるだけでは意味を持たない。統合され、分析され、評価され、責任ある政治判断、政策決定につながってこそ、国家を守る力となる。本法は、その循環を国家として初めて明確に制度化するものである。

同時に、本法は情報活動の強化だけを目的とするものではない。情報の集中は、必然的に統制と責任を伴わなければならない。情報活動が国家の名の下に行われる以上、その在り方は常に適正でなければならず、基本的人権に配意した法令に基づく運用と民主的統制が確保されなければならない。国家情報会議は、かかる民主制の前提の下に情報活動と政策決定を結び付ける場として設けられるものである。

この枠組みの中で、警察の役割は決定的に重要である。対日有害活動を例に挙げれば、外国による情報活動や影響工作は、国内の社会、経済、人的関係の中で進行する。これをいち早く、最も具体的に把握し得るのは、全国津々浦々にネットワークを展開し、市民生活の日常の変化を肌で感じている警察組織以外にはない。現場の警察官が収集し、積み上げてきた情報は、国家情報会議における分析と評価の確固たる土台となることは疑いない。

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