司法研修所検察教官による出張講義 ─ 任意捜査の限界について考える ─(第1回)

第1回 職務質問~職務質問の要件と留意点

司法研修所検察教官による出張講義 ─ 任意捜査の限界について考える ─(第1回)
第1回
職務質問
~職務質問の要件と留意点
 司法研修所検察教官/検事
 亦野またの 誠二せいじ
質問

警察法2条警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。

2(略)

警職法1条(略)

2この法律に規定する手段は、前項の目的のため必要な最小の限度において用いるべきものであつて、いやしくもその濫用にわたるようなことがあつてはならない。

警職法2条警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。

2(略)

3前2項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。

4(略)

 

1
職務質問の意義・性質
警察活動
警察官は、「個人の生命、身体及び財産の保護」及び「犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持」をその責務とします(警察法2条1項)。
このうち、犯罪の捜査及び被疑者の逮捕等、刑事司法のために行われる活動は、司法警察権の行使によるもので、刑事訴訟法をその根拠としています。
一方、犯罪の予防・鎮圧等、社会公共の秩序を維持するために行われる活動は、様々な行政警察法規をその根拠としていますが、犯罪の予防・鎮圧等、犯罪に関連する権限を定めたものが警察官職務執行法、いわゆる「警職法」です。

syuchokogi_202608_02.jpg

「職務質問」とは
警職法2条1項は、「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。」旨を定めています。これを、通常、「職務質問」と呼んでいます。
この職務質問は、警職法を根拠とします。もっとも、例えば、「何らか」の犯罪を犯したと疑って職務質問を開始した後、その「何らか」という不特定の状態から、「特定の犯罪」に絞り込まれていくことも多々あるかと思います。その場合は、質問が「犯罪があると思料するとき」(刑事訴訟法189条2項)に開始される捜査の性質を帯びてきます。一方、職務質問で犯罪が特定されても、犯罪の鎮圧、被害の拡大防止、救済を行う目的の活動が終了するわけでもありません。この場合は、これらの活動と犯罪捜査の性質、この双方を含むものですので、その時点を明確にすることや、明確に分けることは困難です。

syuchokogi_202608_03.jpg

「警察公論」の他の記事を読む

「2026年08月号」の他の記事を読む