もっと知ってほしい私たちの仕事〜相互の理解と連携に向けて〜(第9回)
金融庁(金融犯罪対策室)
第8回 金融庁(金融犯罪対策室)
金融犯罪対策連携調整官
金融庁は、金融システムの安定や利用者保護等の観点から、金融機関等の規制や監督を行っています。その業務の一つとして、金融機関における金融犯罪対策の強化にも取り組んでいます。
犯罪者が犯罪収益を移転する際には金融機関の提供するサービスが用いられる場合も多く、金融庁は従前よりこうしたマネー・ローンダリング等への対策に取り組んできましたが、2024年7月に新たに「金融犯罪対策室」を設置し、収益移転にフォーカスしたマネー・ローンダリング対策のみならず、振り込め詐欺等の金融サービスを悪用した前提犯罪にも対処していく姿勢を示しています。
政府全体の動きとしては、急増する詐欺被害に対処するため、2024年6月に詐欺全般に特化した「国民を詐欺から守るための総合対策」、2025年4月にはその改訂版となる「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」を策定しており、金融庁も、国民の金融サービスに対する信頼の維持という観点からも、同対策に盛り込まれた施策を着実に進めています。以下では、金融庁や業界における取組の一部をご紹介します。
なお、本稿における意見・見解はすべて執筆者の個人的見解であり、所属する組織の公式見解を示すものではありません。

詐欺等の犯罪においては、被害金の授受やその移転先として、不正に開設・譲渡された預貯金口座が用いられるという特徴があります。SNS上で募った協力者に対して法人設立と口座開設を指示し、それによって入手した法人口座を使ったマネロン事案なども報道されました。このため、こうした預貯金口座の不正利用に係る対策が重要となってきます。
こうした状況を踏まえ、2024年8月、金融庁は警察庁と連名で、預金取扱金融機関の各業界団体等に対し、法人口座を含む預貯金口座の不正利用等防止に向けた対策の一層の強化を要請しました。
要請の内容は、口座開設時の実態把握から利用者のアクセス環境等に着目した検知、出金停止・凍結等の措置の迅速化など多岐にわたり、金融機関間での情報共有や、警察との連携の強化についても盛り込んでいます。
また、インターネットバンキングを通じた振込みが被害高額化の一つの要因になっていることがうかがわれることを踏まえ、インターネットバンキング利用申込みの際の確認や注意喚起、インターネットバンキング初期利用限度額の適切な設定、利用限度額引上げ時の確認や注意喚起などの内容を追加する形で、2025年9月に再度要請を発出しました。
① 口座開設時における不正防止及び実態把握の強化
② 利用者側のアクセス環境や取引の金額・頻度等の妥当性に着目した多層的な検知
③ 不正の用途や犯行の手口に着目した検知シナリオ・敷居値の充実・精緻化
④ 検知及びその後の顧客への確認、出金停止・凍結・解約等の措置の迅速化
⑤ インターネットバンキングに係る対策の強化
⑥ 振込名義変更による暗号資産交換業者及び資金移動業者への送金停止等
⑦ 不正等の端緒・実態の把握に資する金融機関間での情報共有
⑧ 警察への情報提供・連携の強化