<特集1>暴力行為等処罰に関する法律(上)
暴力行為等処罰に関する法律(上)
本法は、集団的又は常習的で悪質な暴力犯罪に対処するために制定されたものであり、本年で施行から100年という節目の年を迎えました。
現代社会の治安維持に不可欠であり続ける本法について、より一層理解を深め、現場で適切な措置が講じられることを目指し、2か月にわたって特集をお届けいたします。
〜施行から節目の100年を迎えて〜
第2 本法の適用状況等
第3 逐条解説
1 集団的に又は兇器を示して行う暴行・脅迫・器物損壊罪(第1条)
3 常習的に行う傷害・暴行・脅迫・器物損壊罪(第1条の3)
4 集団的・常習的面会強請・強談威迫の罪(第2条)
5 集団的方法による各犯罪の請託(第3条)
第4 おわりに
暴力行為等処罰に関する法律(以下「本法」という。)は、大正15年(1926年)3月25日に成立し、同年4月30日に施行され、本年で100年の節目を迎えた。この法律が制定されたのは、第一次世界大戦後の社会的・経済的不安が蔓延する大正末期であった。この当時は、いわゆる壮士、博徒、三百代言、政治ゴロ、会社ゴロ等の徒輩が横行し、集団的な暴行・脅迫・器物損壊・面会強請・強談威迫などの事犯が多発していたほか、労働運動や農民運動なども暴力化の傾向を示していた。そこで、こうした集団的又は常習的で悪質な暴力犯罪に対処するために本法が制定されるに至ったとされている。
本法は、集団的又は常習的に行われる暴行・脅迫・器物損壊行為について刑法の刑を加重するとともに、これらの方法による暴行や器物損壊行為について親告罪の要件を外すことによって訴追を容易にし(第1条)※1、集団的又は常習的に行われる面会強請や強談威迫について旧警察犯処罰令に定められていた刑の加重を図り(第2条)、財産上の利益等を供与して各種の暴力行為を利用しようとする行為やその供与を受ける行為を新たに処罰の対象とした(第3条)ものとして制定され、戦前戦後を通じて、第1条を中心に活発に運用されてきた。そのような中で、昭和32年以降、暴力団の対立抗争に伴う暴力団構成員らによる常習的な殺傷事犯や、拳銃や日本刀などの危険な凶器(なお、本法第1条では「兇器」と表記されている。)を使用した殺傷事犯が多発し、社会に大きな不安が生じたことから、悪質な暴力犯罪の取締りの徹底とより適切な科刑の実現を図るため、昭和39年6月20日、銃砲又は刀剣類を用いて行う傷害罪の規定(第1条の2)の新設及び常習暴力行為の規定の整備と強化(第1条の3)を内容とした暴力行為等処罰に関する法律の一部改正法(昭和39年法律第114号)が成立し、同年7月14日に施行された。
本法は、こうした戦前戦後の混乱期に社会に蔓延する暴力事犯に対処するために制定・改正されてきたものであるが、現代においても、悪質な暴力事犯に対して適切な取締りと科刑を実現する観点から、様々な場面で適用されてきている。
本稿においては、本法施行100年を機に、近時の本法の適用状況を概観するとともに、捜査現場における活用を念頭に置いた上で、これまでに蓄積された裁判例を紹介しつつ本法各条の概要を解説することとしたい。
なお、本稿中意見にわたる部分は、筆者の私見であることを申し添える。