捜査のリアルを法学で武装せよ:元県警刑事部長が説く「最短ルート」の刑事訴訟法

Section03 捜査の主体③(司法警察職員と検察官の関係)

捜査のリアルを法学で武装せよ:元県警刑事部長が説く「最短ルート」の刑事訴訟法
Section 03
捜査の主体③
(司法警察職員と検察官の関係)
前Sectionの振り返り
Section02では、特別司法警察職員と検察官を扱いました。より重要なのは、後者の検察官で、これも警察官(一般司法警察職員)とは別に捜査権限を持っています。そこで、今回は、捜査に関して、検察官と司法警察職員はどのような関係にあるのかを学びます。
1 司法警察職員と検察官の関係
司法警察職員と検察官は、どちらも捜査権限を持っていますが、司法警察職員が第1次的捜査機関であるのに対し、検察官は第2次的捜査機関であると考えられています。
司法警察職員と検察官は対等の地位にあり、互いに協力し合う関係にあります(刑訴法192条)。ただし、公訴提起・公判維持という目的達成のため、検察官は、司法警察職員に指図をすることができる権限を有し、司法警察職員はこれに従う義務を負います。この指図権には、一般的指示権、一般的指揮権、具体的指揮権(補助命令権)の3つがあります。

第193条(検察官の司法警察職員に対する指示・指揮)

1 検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、その捜査に関し、必要な一般的指示をすることができる。この場合における指示は、捜査を適正にし、その他公訴の遂行を全うするために必要な事項に関する一般的な準則を定めることによって行うものとする。

2 検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、捜査の協力を求めるため必要な一般的指揮をすることができる。

3 検察官は、自ら犯罪を捜査する場合において必要があるときは、司法警察職員を指揮して捜査の補助をさせることができる。

4 前3項の場合において、司法警察職員は、検察官の指示又は指揮に従わなければならない。

司法警察職員と検察官の関係

2 一般的指示権(刑訴法193条1項)
検察官は、司法警察職員の行う捜査について大綱となる一般的指示を与えておくことができます。
(1) 捜査書類の様式等に関する指示
逮捕手続書、被疑者供述調書、弁解録取書などいわゆる捜査書類の様式を定めるもの(注)で、全国的に統一されていることが必要とされるので、検事総長の名をもって指示されています。

(注)
例えば、司法警察職員捜査書類基本書式例、司法警察職員捜査書類簡易書式例、道路交通法違反事件迅速処理のための共用様式などがある。


(2) 微罪処分に関する指示
第246条(司法警察員の事件送致)
司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定めのある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物と共に事件を検察官に送致しなければならない。ただし、検察官が指定した事件については、この限りでない。
微罪処分とは、刑訴法246条ただし書に基づき、検察官があらかじめ指定した犯情の特に軽微な20歳以上の者による事件について、司法警察員が検察官に送致せず、例えば警察限りで説諭等の処分に留める手続(注)をいい、検事総長名で指示され、細目の点については検事正が定めます。

(注)

犯捜規
第198条(微罪処分ができる場合)
 捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。

第200条(微罪処分の際の処置)
 第198条(微罪処分ができる場合)の規定により事件を送致しない場合には、次の各号に掲げる処置をとるものとする。

① 被疑者に対し、厳重に訓戒を加えて、将来を戒めること。

② 親権者、雇主その他被疑者を監督する地位にある者又はこれらの者に代わるべき者を呼び出し、将来の監督につき必要な注意を与えて、その請書を徴すること。

③ 被疑者に対し、被害者に対する被害の回復、謝罪その他適当な方法を講ずるよう諭すこと。



3 一般的指揮権(刑訴法193条2項)
検察官が管轄区域内の司法警察職員に対して、捜査の協力を求めるための一般的な指揮で、2つ以上の捜査機関が一つの事件を捜査する場合、その間の調整を目的としたものです。同時並行で競合して捜査する場合に、捜査の協力を求めるために必要な範囲で行われます。

4 具体的指揮権(補助命令権)(刑訴法193条3項)
検察官自身が独自捜査を行う場合に、検察官の責任において司法警察職員を指揮して独自捜査を補助させるものです。補助命令権とも呼ばれます。司法警察員から送致された事件については、これに該当するか否か意見が分かれています。
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次のSectionから、刑事手続の流れを扱います。まずは、刑事手続の意義と大まかな流れを説明します。
著者プロフィール
著者画像
一瀨いちせ 裕文ひろふみ
1959年、福岡県生まれ。佐賀大学卒業後、福岡県警察官を拝命。
九州管区警察学校刑事教官、久留米警察署刑事管理官、警察庁出向(暴力団対策課課長補佐)、監察官などを経て、宗像警察署長、組織犯罪対策課長、暴力団対策部副部長、博多警察署長、生活安全部長、刑事部長などを歴任。2019年3月、退職。
ロングセラー「要点整理 捜査手続法」や「擬律判断の手引」の執筆に関わる。退職後、「気づきの付箋 警察実務の不易流行」(春吉書房、2019年)及び「はじめての刑法 ウォーミングアップ総論・各論」(春吉書房、2023年)を著す。
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