もっと知ってほしい私たちの仕事〜相互の理解と連携に向けて〜(第7回)
JC3職員
第7回 JC3職員

警察公論をお読みの皆さん、はじめまして。
私は、一般財団法人日本サイバー犯罪対策センター(以下JC3)で勤務している警察官OBです。昨年の春に警視庁を定年退職し、現在は、渉外企画担当として、日々、JC3会員企業の担当の方々、学術界の方々及び法執行機関(警察)の担当部署の方々と、サイバー空間の脅威情報や対処経験を共有することにより、サイバー犯罪等の脅威を特定、軽減及び無害化するための活動に従事しています。また、各都道府県警察が主催するサイバーセキュリティ対策における官民連携の協議会等に参加し、脅威情勢や官民連携の重要性について講演をしています。私は警視庁在職中、長年にわたり国際テロ対策や危機管理部門において、主に現実空間にある脅威や事態への対処に携わってきましたが、退職直前の4年半はサイバー攻撃対策に従事していました。この時の経験から、サイバー空間における脅威の深刻さは理解しているつもりでしたが、JC3での勤務を通じ、改めて、日進月歩で変化(深刻化)するサイバー空間における脅威を肌で感じています。今回は、JC3の活動を紹介させていただくとともに、サイバー犯罪対策における官民連携の重要性について、警察組織を離れた一民間人の視点からお伝えできればと思います。


JC3は、2014年11月から活動を開始しました。JC3は創設に当たり、米国のNational Cyber-Forensics &Training Alliance(NCFTA)をモデルとしています。
NCFTAは、サイバー空間における脅威への対処を目的として設立された非営利法人であり、2002年以降、FBIをはじめとする法執行機関、大学等の学術機関及び200以上の民間企業との連携組織として活動しており、迅速な情報収集、アナリストによる情報分析、情報に基づく迅速な捜査等を遂行するためのトレーニングを提供しています。
JC3が創設されるに当たっては、2013年6月に開かれた警察庁の情報セキュリティ政策会議で決定されたサイバーセキュリティ戦略に、「民間事業者等の知見を活用した取組の強化については、日本版NCFTAの創設をはじめ(以下略)」と明示され、さらに同年12月の閣議で決定された「『世界一安全な日本』創造戦略」において、「産学官の有する情報を一元的に集約・分析して、サイバー犯罪・サイバー攻撃の抑止対策及びサイバー空間における捜査にいかすため、秘密保全の在り方を含め、日本版NCFTAの創設について検討を行い、速やかに実施する」と言及されたことが大きな契機となり、産学官の呼びかけで財団が設立されました。JC3は、産業界、学術界及び法執行機関(警察)が、サイバー犯罪の防止に向けて連携する情報共有・分析の言わばハブの役割を担っており、決して民間事業者向けのセキュリティマニュアルの発行や、個別のインシデント等への相談・対応等のコンサルティング業務を行っているわけではありません。
JC3における活動の主体は、会員企業、学術機関及び警察関係者であり、それらの方々が参加するグループ会合やプロジェクト会合で情報共有・分析及び今後の対処の検討をすることが、主な骨格です。その活動は、大きく以下の4つのチームに分けられています。
(https://www.jc3.or.jp/about/#:~:text=JC3%E3%81%A8%E 3 %81%AF-,Japan%20 Cybercrime%20Control%20Center,%E3%81%AB%E8%B2%A2%E7%8C%AE%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82)
(1) 経済・金融犯罪対策チーム
経済・金融犯罪対策チームは、経済的利益を狙ったサイバー犯罪への対応に取り組むチームで、金融犯罪対策グループとeコマース対策グループに分けられています。金融犯罪対策グループは、インターネットを悪用した金融犯罪事案についての情報共有を進めるとともに、攻撃の未然防止、攻撃者に対する司法的追求も含めた脅威の無害化を図る活動を推進しており、グループの中で不正送金事案情報分析プロジェクト、テクニカルサポート対策プロジェクト、モバイル事犯対策プロジェクトがそれぞれ活動しています。また、eコマース対策グループは、eコマースビジネスに対する詐欺等の脅威を把握して適切な対策を講じることにより被害防止を図るため、情報共有・手口分析等を行っており、悪質サイト対策プロジェクト及び不正トラベル対策プロジェクトが活動しています。後ほど詳述しますが、最近はフィッシングサイトを介した銀行口座乗っ取りによる不正送金事案や証券業界における不正株取引事案、クレジットカードの不正利用による被害が深刻化しており、被害の拡大防止に向け、活発な議論が交わされています。