実務刑事判例評釈(case 363)

[case 363]長野地松本支判令6.10.30

実務刑事判例評釈(case 363)
法務省刑事局付 鈴木すずき 美香みか
[case 363] 長野地松本支判令6.10.30

被害者の身体への接触を伴わない行為の「わいせつな行為」(刑法176条)該当性に関する判断が示された事案(確定) >>公刊物未登載

1 事案の概要等

    本件は、同じ職場に勤める被害者(女性)に好意を抱いていた被告人(男性)が、

 被害者所有のガム入りガムボトルの中に被告人の精液を混入させ、情を知らない被害者をして同ガムボトル内に混入した精液に触れさせるなどしようとしたが、被害者が同ガムボトル内に混入していた体毛に気付いて精液に触れるなどしなかったためその目的を遂げなかった
 被害者所有のウェットティッシュ1袋内のウェットティッシュに被告人の精液を付着させ、情を知らない被害者をして同ウェットティッシュを手でつかませて精液を被害者の手に付着させた
事案である。
 検察官は、被害者の身体への接触を伴わない前記①及び②の行為が「わいせつな行為」(刑法176条)といえるかを検討した上、積極に解し、①を不同意わいせつ未遂、②を不同意わいせつ既遂(いずれも刑法176条1項5号)でそれぞれ起訴した *1

*1
 検察官は、前記①及び②の行為をいずれも器物損壊罪(精液による汚損)でも起訴したほか、同じ被害者に対する別件器物損壊の事実(被害者所有の飴入りチャック付き袋内の飴に被告人の唾液を付着させて汚損)及び別件軽犯罪法違反の事実でも合わせて起訴したが、これらについては割愛する。

2 争点

    被告人側は、前記①及び②の行為はいずれも刑法176条にいう「わいせつな行為」に当たらないなどとして、不同意わいせつ罪の成立を争った。なお、被告人側は、不同意わいせつ罪の成否に関連して、このほか、刑法176条1項5号の「同意しない意思を形成(略)するいとまがないこと」該当性についても争ったが、本稿では「わいせつな行為」該当性についてのみ取り上げることとする

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