実務刑事判例評釈(case 365)

[case 365]東京高判令7.10.30

実務刑事判例評釈(case 365)
法務省刑事局付 直江なおえ 泰隆やすたか
[case 365] 東京高判令7.10.30

露店出店権の詐取を前提犯罪とする場合における同出店権に基づく営業によって得た売上金について、同出店権の「保有又は処分に基づき得た財産」として、「犯罪収益に由来する財産」に該当するとした事例
>>公刊物未登載

1 はじめに

    本件は、暴力団員である被告人らが、暴力団員による露店出店が禁止されている祭へ露店を出店しようと考え、暴力団員であることなどを秘して出店許可申請を行って露店を出店する権利を詐取したという詐欺の事案である。
 本件においては、公訴事実を含め事実関係に争いはなかったものの、被告人らが同権利に基づく営業によって得た売上金について、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」という。)2条3項に規定する「犯罪収益に由来する財産」すなわち「犯罪収益の保有又は処分に基づき得た財産」に該当するか否かが問題となったものである。
 「犯罪収益の保有又は処分に基づき得た財産」の意義等については、実務上、必ずしも明らかになっているとは言い難く、先例となる裁判例も乏しい現状にあった中で、本判決は、露店の営業によって得た売上金について、露店を出店する権利の「保有又は処分に基づき得た財産」に該当するとして、「犯罪収益に由来する財産」に当たる旨判示したものであり、今後の実務の参考になるものと考えて紹介する次第である。
 なお、本稿中、意見にわたる部分は、もとより筆者の私見である(以下、下線は筆者による。)。

2 事案の概要等

(1) 事案の概要

 暴力団員であるX及びその知人であるYは、令和6年にA市内の公園で開催される祭(以下、判示の引用部分を除き、「本件祭」という。)に玉こんにゃくを販売する露店(以下、判示の引用部分を除き、「本件露店」という。)を出店することとした。
 本件祭への露店出店については、出店許可を得ようとしている者が暴力団員である場合又は暴力団員が当該露店の経営を支配する場合等については、A市は出店を拒否することとなっていた。
 そこで、Xらは、Xが経営を支配することなどを秘し、A市に対し、暴力団員でないY名義で出店許可申請を行い、Y名義で露店を出店する権利(以下、判示の引用部分を除き、「本件露店出店権」という。)を得た。
 Xらは、本件露店出店権に基づき、同年4月2日から同月14日までの間、本件露店の営業を行った。
 本件露店の売上金を特定することができた期間は、同月13日及び同月14日の2日分であるところ、その2日分の出店料は620円(1日当たり310円であり、営業期間(14日分)の出店料は合計4,030円)、玉こんにゃくの仕入代金は1万2,000円であり、売上金は合計10万円(以下、判示の引用部分を除き、「本件売上金」という。)であった。
 なお、本件売上金のうち1,000円については、Xらの関係先において差し押さえられたものの、その余の9万9,000円については発見に至らなかった。

(2) 公判経過の概要

 第一審において、検察官は、本件売上金は「犯罪収益に由来する財産」において、検察官は、本件売上金は「犯罪収益に由来する財産」に該当するとして、前記1,000円の没収を求刑するとともに、9万9,000円の追徴を求刑した。
 これに対し、第一審判決(新潟地判令6.12.16公刊物未登載〔以下「原判決」という。〕)は、公訴事実のとおり詐欺罪の成立は認めたものの、本件売上金は「犯罪収益に由来する財産」に該当しないとして、前記1,000円の没収及び9万9,000円の追徴について、いずれも認めなかった。
 これに対し、検察官が控訴したところ、本判決は、本件売上金は「犯罪収益に由来する財産」に該当するとして、検察官の求刑のとおり、前記1,000円の没収及び9万9,000円の追徴を言い渡した。

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