◆連載エッセイ◆ 薬物捜査指揮官への道(第1回)

(第1回)昇任への動機づけ

◆連載エッセイ◆ 薬物捜査指揮官への道(第1回)
プロローグ

    令和7年8月、私は薬物銃器対策課長に就任し、その数日後、課長室に立花書房の警察公論担当者が訪れた。
 実は1年前、同誌への寄稿をお願いされたことがあり、いったん引き受けたのであるが、東京都江戸川区の東北部を管轄する小岩警察署長の業務は多忙であり、執筆する余裕もなく途中でお断りをしてしまうという経緯があった。その後、立花書房とはすっかりご無沙汰してしまったのであるが、編集部長をはじめ幹部による直々の来訪であり、私からの一方的なキャンセルであったにもかかわらず再度の原稿依頼ということで、前回の申し訳ないという気持ちとその熱意にほだされ、快諾させていただいた。また編集長から

「是非、課長から若い捜査員に対して熱いメッセージを送ってもらいたい」
という言葉が、私のやる気スイッチをオンにしたのも事実である。こうして再び原稿を書くチャンスを頂いたことに、立花書房に心から感謝を申し上げる。
 ところで、打ち合わせにおいて、編集部長から
「所属長で広域技能指導官は珍しいですね」
という話があった。確かに、ほとんどの指導官は警部か管理官クラスであり、そこで退職してしまう。スペシャリストというのは大体、どの分野においても自分の専門とする業務に没頭するあまり、昇任試験には興味がない。かくいう私も、階級への執着は全くなかった。むしろ、退職まで現場主義の一捜査員でありたいと思っていたほどである。
 警察公論の読者の皆さんは、毎日忙しい日々を送りながらも、本誌に掲載されたSA問題等に取り組みながら、昇任試験合格に向けて頑張っていることと思う。きっと、それぞれが様々な動機を持って励んでいるに違いない。ただ、願わくばその動機と併せて、こういう考え方もあるんだ、幹部になるとこんな世界が広がるんだ、ということも是非知ってもらいたいのである。
 努力は必ず報われる
 もし報われない努力があるならば
 それはまだ努力とは呼べない
 私の拙筆が、少しでも皆さんの昇任意欲を燃やす一滴の油になれば幸いである。
 それではこれから、私が歩んできた薬物捜査指揮官への長い道のりの物語を始めよう。

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