犯罪被害者等支援弁護士制度が始まりました!

犯罪被害者等支援弁護士制度が始まりました!
 1 はじめに

    犯罪被害者等支援弁護士制度(以下適宜「本制度」といいます。)は、犯罪被害者やその御家族が精神的・身体的被害により、刑事手続への適切な関与や被害の回復・軽減のための法的対応等を自ら行えず、経済的困窮から、弁護士による援助を受けられない場合があることを踏まえ、原則として日本司法支援センター(以下「法テラス」といいます。)が費用を負担して早期の段階から弁護士による包括的かつ継続的な援助を行う制度です。
 本制度は、第213回通常国会で成立した総合法律支援法の一部を改正する法律(令和6年法律第19号)により創設されたものであり、令和8年1月13日からその運用を開始しております。
 本稿は、犯罪捜査の最前線で犯罪被害者等と接する警察官のみなさんに対し、本制度誕生の経緯や本制度の概要などについて、是非知っておいてもらいたい内容を説明するものです。

 2 犯罪被害者等支援弁護士制度が創設されるまでの道のり

(1) 従来の犯罪被害者支援における課題

犯罪被害者等基本法(平成16年法律第161号)は、その基本理念(同法3条)において、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」(同条1項)、「犯罪被害者等のための施策は、被害の状況及び原因、犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情に応じて適切に講ぜられるものとする。」(同条2項)、「犯罪被害者等のための施策は、犯罪被害者等が、被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、必要な支援等を途切れることなく受けることができるよう、講ぜられるものとする。」(同条3項)としており、国は、この基本理念にのっとり、犯罪被害者等のための施策を総合的に策定・実施する責務を有するとされています(同法4条)。
 犯罪被害者やその御家族(以下「犯罪被害者等」といいます。)は、犯罪の被害に遭われた直後から、その被害の状況及び原因等に応じて、刑事・民事関連を始めとする様々な対応が必要となり、それぞれが置かれている状況も異なります。中には、例えば、精神的・身体的被害等によって自らこうした対応を行えない方もいらっしゃいますし、また、その被害に起因するなどして経済的に余裕がないことにより、弁護士等による援助を受けることを諦めたり、ためらったりされる方もいらっしゃいます。
 これまで、法テラスは、平成18年の設立・業務開始以来、犯罪被害者等への支援として、➀「犯罪被害者支援ダイヤル」という電話での情報提供サービスを運用し、問合せをされた犯罪被害者等に対し精通弁護士(犯罪被害者支援の理解や経験のある弁護士のことです。)の紹介等を行ってきたほか、➁損害賠償請求等の犯罪被害に起因する民事裁判手続に関して、一定の資力要件の下で無料法律相談や弁護士費用等の立替え等を行う「民事法律扶助」による支援、➂行政手続等に関して、日本弁護士連合会から委託を受けて行う「日本弁護士連合会委託援助(犯罪被害者)」による弁護士費用の支援、➃国選被害者参加弁護士の候補の裁判所への指名通知や被害者参加人への旅費の支給等の支援、➄DVや虐待等の事案について法律相談を行う「DV等被害者法律相談援助」による支援等を行ってきました*1
 しかし、犯罪被害者等関係団体や犯罪被害者等支援に携わっている弁護士等からは、こうした現行の法テラスによる犯罪被害者等支援は、その対象や支援内容が限定的であって、前記の犯罪被害者等基本法の基本理念にのっとって、犯罪被害者等に対する支援を一層推進していくためには、精神的・身体的被害等によって自ら必要な対応ができず、経済的にも困窮している犯罪被害者等に対し、被害直後の早期の段階から包括的かつ継続的に援助する仕組みの必要性が指摘されていました。

(2) 本制度創設の経緯*2

そこで、法務省においては、令和2年7月から「犯罪被害者支援弁護士制度検討会」を設置し、弁護士による犯罪被害者等への支援を充実させる観点から、支援の在り方等について、法制度化に向けた課題を含め広く検討を開始し、令和3年10月からは、「犯罪被害者支援弁護士制度・実務者協議会」を設置して、真に援助が必要な犯罪被害者に対する法的支援の方策・在り方について、実務的な観点から引き続き検討を行うなどし、令和5年4月、早期の段階から弁護士による「継続的かつ包括的」な支援を受けられるようにするとともに、これに対する必要な経済的援助を行うことを内容とする制度の導入を求める取りまとめを公表しました。
 また、これと並行して、与党である自由民主党においても、政務調査会司法制度調査会の下に設けられた「犯罪被害者等保護・支援体制の一層の推進を図るPT」における犯罪被害者支援団体等からのヒアリング結果を踏まえて、同月、「犯罪被害者等施策の一層の推進のための提言」が取りまとめられ、被害者支援弁護士制度の創設が提言されました。
 こうした取りまとめ結果や提言を受けて、政府においては、同年6月には、内閣総理大臣を会長とする「犯罪被害者等施策推進会議」において「犯罪被害者等施策の一層の推進について」が決定され、本制度の導入に向けた具体的検討を行い、所要の法整備を含めた必要な施策を実施することとされました。
 この犯罪被害者等施策推進会議決定等を受けて、法務省において総合法律支援法(以下「総支法」といいます。)の改正に向けた立案作業に着手し、令和6年3月5日の閣議決定を経て、「総合法律支援法の一部を改正する法律案」が第213回通常国会に提出され、同年4月に本改正法が衆参両議院で可決成立し、法務省における検討の開始から実に約4年の時を経て、犯罪被害者等のみなさまから強いお声を頂いていた犯罪被害者等支援弁護士制度が誕生するに至ったものです。
 国、そして法テラスにおいては、こうした本制度の成立までの歩み、道のりに思いを馳せて、本制度が真に犯罪被害者等に寄り添ったものとなるよう、犯罪被害者等支援に携わる関係機関と緊密に連携して適切な運用を行うことが求められています。

*1
 日本司法支援センター編著『法テラス白書 令和6年度版』128頁以下参照、https://www.houterasu.or.jp/site/about-houterasu/r6hakuksyo.html
*2
 本田恭子・奥村寿行・歸山俊祐「犯罪被害者等支援弁護士制度の創設について」警察学論集第77巻第12号35頁以下参照。

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