警察官だからこそ知っておくべき警備事件~曙事件(佐野嘉盛邸襲撃事件)~

~曙事件(佐野嘉盛邸襲撃事件)~

警察官だからこそ知っておくべき警備事件~曙事件(佐野嘉盛邸襲撃事件)~
事件の概要

    昭和27年7月30日午後10時頃、山梨県南巨摩郡曙村(現・身延町)において、こん棒、竹棒、ロープ、わら縄、懐中電灯等を携えた集団が、同村の素封家(資産家)である佐野嘉盛の邸宅を襲撃した。
 同集団は、順次屋内に侵入すると、母家内の奥十畳間で就寝していた佐野嘉盛、表十畳間で就寝していた妻A、姪B、甥C、家政婦Dの姪Eに襲い掛かった。
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    姪B、甥C、家政婦Dの姪Eに対しては、その身体をこん棒、竹棒等で乱打し、負傷させた。
 佐野嘉盛に対しては、「悪盛、神妙にしろ。逃げると殺すぞ。」などと脅迫し、こん棒、竹棒等を振り回すなどして、右腕を殴りつけた。同人は蚊帳の中に逃れたが、同集団は攻撃の手を緩めず、その臀部を突き飛ばした。さらに、戸外に逃走した同人を追い駆けると、東南の方角100メートル余りにある桑畑の中に追い詰めるや否や、その場に組み伏せて、こん棒、竹棒等で殴打し、負傷させた。
 妻Aに対しては、その前額部等をこん棒で乱打し、襟首を捉えて炉辺(囲炉裏のそば)に引き出して押し倒した。そして、殴打と足蹴を重ねた上、ロープで緊縛し、庭前に引き据えて、殴打と足蹴を更に繰り返し、負傷させた。
 同集団の一部は離れに押し掛けて、二階で就寝していた家政婦Dを一階へと下ろし、母家内の六畳間に引き入れて、わら縄で縛り上げた。そして、妻Aの付近に引き据えると、両名に対して、「嘉盛が貧乏人から巻き上げた金で、貴様らが楽な生活をしている。」などと悪罵を投げつけた上、頭上に冷水を浴びせかけた。さらに、こん棒を振り回して家政婦Dの上半身等を殴りつけ、負傷させた。
 このように、一連の暴行によって佐野嘉盛とその家人を抑圧した後、同人の邸宅南側の土蔵から粳籾うるちもみ14貫(52.5kg)を、約40m離れたT方野菜畑の石垣上まで担ぎ出して強取した。
 なお、ガラス戸5本、板ガラス25枚、洋服箪笥1個、帯戸3本、金屏風半双、格子戸4本、障子2本、潜り障子戸1本、襖2本、電灯竿1個、電球3個、ラジオ1台、仏壇1個、鶏卵30個、壜入り清酒2升も損壊した。

事件の背景

    曙村の耕作地は狭隘で痩せており、しかも、村民の大半は斜面の田畑を耕作せざるを得ず、過酷な労働を強いられていた。炭焼、山稼ぎ、土木作業等を兼業して、辛うじて生計が立てられるという状況であった。
 一方、佐野嘉盛は広大な田畑を保有し、村内随一の資産家であったが、債権の取立てに際して、債務額の数倍の価値がある物件を差し押さえることで相手方を破産に追い込むなど、酷薄に過ぎる行状があった。村民が長年待ち望んでいた林道の開設計画が持ち上がったときは、自己の便宜を図るため、当初の計画を変更させようと策動した。また、労働者を低賃金で酷使しているという非難も受けていた。そのような振る舞いについては、勢威を背景に私欲を追求する傾向があったとされ、村内の左傾的な活動に対しては、転向や共産党への入党避止の勧告を行うなど、ある種の妨害活動を行っていた。

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