実務刑事判例評釈(case 362)
[case 362]福岡高宮崎支判令6.11.21
入札前に予定価格が公表・通知される入札において、予定価格算定の基礎となる査定決定額等が、入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律8条の「予定価格その他の入札等に関する秘密」に該当し、予定価格の公表・通知に先んじて、査定決定額等を特定の業者に教示した行為が、同条の「入札等の公正を害すべき行為」に該当するとして、同法違反の成立を認めた事例 >>公刊物未登載
1 はじめに
本件は、宮崎県X市の副市長であった被告人が、同市内の甲社代表取締役であり、同市建設業協会会長を務めていたAに対し、➀平成30年に執行されたa工事の条件付き一般競争入札及びb工事の指名競争入札に関し、工事の入札に関する秘密事項である予定価格に近似する概ねの査定決定額を公表・通知前に教示し(以下「➀事実」という。)、➁令和2年に執行されたc工事に係る指名競争入札に関し、工事の入札に関する秘密事項である予定価格に近似する概ねの査定決定額及び工法を通知前に教示し(以下「➁事実」という。)、➂Aとの間で、談合に参加しない乙社を年度内の指名競争入札の指名業者から排除しようと共謀*1し、令和2年に執行されたd工事の指名競争入札から乙社及び丙社を除外し、丁社に工事を落札させた(以下「➂事実」という。)という、入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(以下「官製談合防止法」という。)違反及び公契約関係競売入札妨害の事案である。
本件の争点は、主として、➀事実及び➁事実について、被告人がAに教示した査定決定額等が官製談合防止法8条の「予定価格その他の入札等に関する秘密」に該当するか及びこれらを公表等の前に特定の業者に教示する行為が「入札等の公正を害すべき行為」に該当するか、➂事実について、被告人が乙社をd工事の指名競争入札から除外したと認められるか及びその際に指名業者選定のルールを導入したことが行政裁量の範囲内の行為といえるかの点である。
特定業者への予定価格等の漏示及び特定業者に有利となる指名業者の選定は、官製談合防止法違反及び公契約関係競売入札妨害における典型的な行為であるところ、本判決は、事例判断ではあるものの、官製談合防止法8条の「秘密」及び「入札等の公正を害すべき行為」の意義について判示した上で、被告人による査定決定額等の教示行為について各罪の成立を認めるとともに、d工事の指名競争入札からの乙社の除外について、具体的な事実関係に基づいて被告人の弁解を排斥し、各罪の成立を認めたものであり、実務上参考となり得るものである。
なお、本稿中意見にわたる部分は筆者の私見である。