実務刑事判例評釈(case 366)

[case 366]福岡高判令7.11.27

実務刑事判例評釈(case 366)
法務省刑事局付  丸山まるやま 真里子まりこ
[case 366] 福岡高判令7.11.27

監護者わいせつ罪における「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」の要件該当性が問題となった事例
>>公刊物未登載

1 はじめに

    本件は、監護者わいせつ罪における「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」の要件(以下「本件要件」という。)該当性が問題となった事案である。第一審では、監護者わいせつ罪の成立について積極的に争われず、監護者わいせつ罪の成立が認められたが、被告人が量刑不当を理由に控訴し、控訴審では本件要件該当性が問題となり、検察官により、監護者わいせつ罪から不同意わいせつ罪への訴因等変更請求がなされたところ、控訴審裁判所は、本件要件該当性を否定し、原判決を破棄した。
 近時、性犯罪に関する重要な法改正が相次いでおり、具体的には、平成29年7月に監護者性交等罪の創設等を内容とする「刑法の一部を改正する法律」が、令和5年7月に不同意性交等罪の創設等を内容とする「刑法の一部を改正する法律」がそれぞれ施行され、捜査実務にも大きな影響を与えている。これらの法改正によって、性犯罪に係る各規定の適用関係も複雑となり、捜査に携わる者にとっては、その擬律判断に迷う場面も少なくないと思われる
が、本判決は、不同意わいせつ罪が成立する場合の監護者わいせつ罪の成否や、本件要件の解釈適用について判断が示されたものであり、同種事案の捜査に携わる読者にとっても有益なものであると考えられることから、御紹介することとした次第である。
 なお、本稿中、意見にわたる部分はもとより私見である。

2 事案の概要等

    本件は、被告人が、同居中の実子(以下「V」という。)に対し、

(1)
 約10か月の間に、6回にわたり、当時の被告人方において、その陰部を指で押し広げ、又はその陰部に自己の陰茎を直接押し当て、こすりつけるなどして、わいせつな行為をした
(2)
 前記(1)記載の犯行のうち5回の犯行時に、自己の携帯電話機でVの性的姿態を撮影するとともに児童ポルノを製造した
事案である。
 前記(1)記載の犯行当時、Vは生後約2か月から1歳であった。
 検察官は、前記(1)(2)の各犯行について、監護者わいせつ、性的姿態等撮影、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護に関する法律違反(以下「児童ポルノ法違反」という。)に当たると判断して起訴した。
 なお、第一審、控訴審ともに、性的姿態等撮影罪及び児童ポルノ法違反の成立については争点となっておらず、両判決において問題なくそれらの成立が認められていることから、以下では監護者わいせつ罪の成否についてのみ述べることとする。

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