管区警察学校へようこそ〜交通鑑識のプロによる講義〜
vol.2 痕跡の見方と交通事故事件捜査への活用方法
警部補任用科の授業「交通事故事件現場における捜査要領」を、当時を再現し、実況中継形式でお届け!
元警察庁指定広域技能指導官(交通鑑識)
前回(9月号)は、「交通鑑識とは何か」「交通鑑識の心構えと必要な知識・技能」「交通鑑識的視点からみた初動捜査の在り方」などについて説明しました。
今回は、前回のおさらいをしつつ、「痕跡の具体的な見方」と、それを活用した「交通事故事件捜査実例」についてお話しします。
1 初動捜査で大事なことは何か
(1)積極的な事件判断
「初動措置で大事なことは何か」、それは、1人では捜査できないのですから、組織捜査に乗せるため、「これはヤバイ、ひき逃げ事件かもしれない」、と「積極的に事件性を判断する」ということですね。事案が重大であれば、本部の交通事故事件担当課に舵を任せるのが一番です。
以前、こんなことがありました。
乗員が車外放出され死亡したという単独事故として臨場した署の交通課員から、「単独事故でも処理できなくはないけど、何か変だな、このままでいいのかなと感じる」という趣旨の要請を受けて現場臨場した事案でした。そして、「単独事故で必ずしも説明できないわけではないけれど、確かに脳漿の飛翔方向が不自然だ」と判断し、司法解剖したのです。
すると、解剖が終わって縫合し始めた頃に、血管から抜けた血液と、組織内に残留する血液の色調の差が皮下出血線のように浮かび上がりました(資料1)。